ヒエロニムス=ボス
7月26日より夏期休暇を利用して、イタリアに行って参りました。
フィレンツェ、ミラノ、ヴェネツィアと周りましたが、特にヴェネツィアのアカデミア美術館で運良く、ヒエロニムス=ボスの展覧会が開催されておりました。
16世紀の宗教改革運動の偶像破壊のあおりを受け、多くの作品が失われ、現存するのはわずかに30点前後と言う、めったに目にする事のない希少な作品を多数まじかで、ゆっくりと観れました。
「隠者たち 1504年頃」
部分
ボスの作品は謎が多く、宗教的解釈をする説がほとんどですが、個人的意見を言わせてもらえば、個々の場面を解釈しても、あまり意味がない様に思えます。
中世より続く、キリスト教、主にカトリックの価値観が画家達に与える影響が絶対であった時代に、かくも荒唐無稽な、ある意味(ナンセンス)な作品を創造し得たという事、そして、その時代の民衆に熱狂的に受け入れられたという事実に驚きます。
ボスの描く圧倒的な(ナンセンス)の世界は、宗教的な虚飾に満ちた常識という外皮を一枚剥いだ世界、つまりは本当のリアルな世界を表しており、現実世界はかくも(ナンセンス)に満ち溢れているのだと我々に示し、大声で叫んでいる様に見えてしまう。
その事が民衆の本音に直接的に響いたのではないだろうか。
そしてその(ナンセンス)な世界は残念ながら現在まで続いている様に思える。
ダリやマグリットなどのシュールレアリズムを400年以上も前に先取りしているのは間違いなく、現代のアニメーションにまで通じる所があるようにも思える。
これ程難解だが、直感的に理解しやすく、醜悪だが、魅惑的で美しく、一度見れば忽ちその虜になってしまう画家はめったにいない。